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導波モード全反射照明ユニット (WG-TIRF)

概要

本体と電源ボックス
図1 本体と電源ボックス

WG-TIRF(図1)は,市販の顕微鏡に付け加えることで,気軽にTIRF(Total Internal Reflection Fluorescence microscopy:全反射蛍光顕微鏡)機能を追加できるオプションユニットです。
TIRFに関する説明や,WG-TIRFと大手メーカー製TIRFとの違いについては,技術ページに記載してありますので,そちらも合わせて御覧ください。大手メーカー製TIRFに対する当社WG-TIRFの特徴を簡単にまとめると以下のようになります。

大手メーカー製TIRF(対物レンズ型)

  • 非常に高価。(数千万円)
  • 高倍率観察(x60以上)に適する。
  • 低倍率(広い視野)の観察はできない。
  • 調整がシビアだが,うまくいけば非常に解像度の高い画像が取得できる。 →ハイエンドユース

WG-TIRF(プリズム型)

  • 低価格(基本セット¥2,000,000-,大手メーカー製品の1/10以下)
  • 低倍率(広い視野)観察に適する。
  • 高倍率になると暗くなる。
  • 日常的な観察に使って,通常よりコントラストの高い画像を取得できる。 →デイリーユース

メーカー製TIRFは,レーザー共焦点顕微鏡と超解像度顕微鏡の間に位置するような製品で,真のハイエンドユーザーが超解像度顕微鏡へとシフトしつつあるなか,それほど普及が進んでいません。
WG-TIRFは,これまで一部の専門家の中で使われていたTIRFという観察手法を,日常的に顕微鏡観察をしているユーザーの皆さんに幅広く使って頂くことを目標に開発しました。研究用の器具であっても,普及させるためには,まず低価格でなくてはなりません。その上で,価格と性能のバランスが良く,研究者のニーズにマッチしていることが必要です。
ここでは,WG-TIRFの機器の構成,使い方,機能,観察画像の例について簡単に紹介します。詳細は,目次から個別の項目へジャンプしてください。

機器の構成

主に本体(図1 右手前)と電源(図1 左奥)の2つユニットで構成されます。

使い方

図2の様に顕微鏡のステージの上に乗せて使います。

顕微鏡への設置イメージ
図2 顕微鏡への設置イメージ

機能
  • 全反射照明による暗視野(散乱光)観察と蛍光観察が可能
  • 2つの全反射光学系を持ち,2重染色したサンプルの蛍光観察が可能
  • 試料台のアタッチメントを交換することで,倒立と正立の両方に対応
観察画像の例

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本体

構成

本体の構成
本体の構成拡大画像図3 本体の構成

図3に示すように,試料台(試料台ホルダー)を中心にして左右対称になっていて,左右それぞれに2つの「入射光学系」が「ベースモジュール」上に配置されています。
ベースモジュールの長辺側に配置されている「支持棒」は,本体を顕微鏡のステージに設置する際,ステージの切欠き部の面積が大きくて安定に設置できないときに使用するもので,必要なければ取り外し可能です。
また,「①光源LEDモジュール(図3)」は,使用する蛍光色素に合わせて適するもの(LEDの種類)選択し,必要に応じて「⑤励起フィルター(図3)」と組合せ,蛍光励起用の光源になります。(※LEDが紫外LEDの場合,ピークの半値幅が十分狭いのでフィルターは必要ありませんが,カラーLEDもしくはWhite LEDの場合,ピークがブロードなので,顕微鏡側の「⑩蛍光フィルター(図4)」に対応する波長特性の励起フィルターが必要になります。)
WG-TIRFは,市販の顕微鏡と組合せてTIRF観察を行いますが,全体の光学系を模式的に示すと図4(対応する光学素子は図3の番号と同じ)のようになります。つまり,WG-TIRF=全反射照明装置であり,全反射照明によるエバネッセント光で励起された色素の蛍光を,顕微鏡側の蛍光フィルターを通し,対物レンズで拡大したイメージを観察しているのです。
ところで,通常の蛍光顕微鏡は落射照明で蛍光色素を励起します。全反射照明と落射照明の違いは,図5(技術ページの図6)に示すとおりで,違いは焦点前後の蛍光分子が発光するかどうかです。焦点前後の蛍光は背景光となり,観察イメージのS/N比を低くしてしまうので,全反射照明すなわちTIRFのほうが背景光が減少し,高いS/Nで観察できます。詳細は,技術ページで説明してあるので,そちらを参照してください。

光学系

WG-TIRFは,上記のように左右に独立した2つの入射光学系と,中央に配置された試料台(プリズム)とで全反射照明を作り出しますが,特徴をまとめると以下の4つになります。

  • 導波モード(Wava-guided mode)を励起してエバネッセント光強度を増強しているため,光源にLEDを使える。
  • 2つの入射光学系は異なる波長帯の励起光(エバネッセント光)を生成し,2重染色に対応している。
  • 入射角補正機能(特許申請中)をもつ
  • 1つの入射光学系に4本の独立した光路を持つ

WG-TIRFの光学素子配置を図6に示します。基本的な構成は,Eva-M02の入射光学系とほほ同じものを左右対象に2つ配置した構成です。(※ポラライザが省略され,励起フィルターと入射角補正レンズが追加されています。) さらに,光学素子の配置を側面・上面図を図7に示します。図を見ると,

  • 左右のプリズム角度により導波モードチップへの入射角(Incident Angle)が決まること
  • 1つの入射光学系あたり独立した4つの光軸があり,導波モードチップ上の4箇所で全反射照明され,エバネッセント光が発生すること
  • 左右のLED光源をON/OFFすることで,4箇所のポイントで独立して入射光を切替えできること

がわかって頂けると思います。
図7の上面図には,全反射位置を楕円で示していますが,正確にはアパーチャーストップ(図6)の開口面積とプリズムの角度とから全反射する領域(=エバネッセント光が発生する領域)が決まります。この領域をフットプリントとすると,シミュレーションで求めたフットプリントの大きさと強度分布は,図8のようになっています。
試料台も光学系を構成する素子になっていることも注目点で,試料台も合わせた全体で導波モード全反射光学系を形成しています。

試料台

試料台は,図7,9のように台形プリズムの長辺側に導波モードチップを貼り付けた(光学結合した)構造になっています。(※正確には,台形の鋭角部分を切り落とした形になっています。)
その導波モードチップ表面には,導波モードを励起するために,SiとSiO2の2層薄膜を形成してあります。そして,導波モードが励起される波長帯域は,入射角と2層薄膜の膜厚によって決まります。(導波モードの励起については,技術ページ参照)。
つまり,蛍光色素を励起するために適切なエバネッセント光を得るためには,設計上,以下のポイントが重要になります。

  • 入射角(プリズム角度)と2層薄膜の膜厚 → 導波モードの励起波長を決める
  • 導波モードの励起波長に合わせたLED光源の選択

基本セットには,動物細胞などの二重染色で最もよく用いられる色素ペア(Green & Red)に対応した試料台とLED光源モジュールがセットされており,オプションで(Blue & Green)や(Green & Deep Red)などに対応した試料台やLED光源モジュールを選択できるようになっています。詳細は,蛍光色素の対応を参照してください。

実際に観察は,試料台表面に観察対象物を接着(又は密着)させて,カバーガラスで水封した状態のプレパラートを作成して行います。図9の下吹き出しにプレパラートの断面で接着した細胞に全反射照明しているイメージを示します。
この時,細胞を蛍光染色していれば,エバネッセント光で蛍光色素が励起され,TIRF観察ができます。また,蛍光染色していない場合,エバネッセント光は細胞の輪郭部分で散乱されるため,全反射暗視野観察ができます。

試料台
試料台拡大画像図9 試料台

入射角度補正機構

導波モードチップは半導体プロセスで製造されており,膜厚の製造誤差は小さいですが,導波モードの励起条件はナノメートルレベルの膜厚誤差で変化してしまいます。そこで,WG-TIRFは入射角補正レンズを上下させることで,入射角を微小に調節する機構を備えています。この機能は,図10に示すように,焦点距離の長いシリンドリカルレンズをマイクロメーター付きのX軸ステージで移動させることで実現しています。
レンズの調節範囲は上下±3mm,その時θ1の変化範囲は±1.8°,θI0とθI1の差はおよそ±1°です。X軸ステージでの移動精度は10μmなので,入射角(θI)の補正精度=1/300°と,非常に細かな調整が可能となっています。


図10

市販の顕微鏡に対する対応性

本体のサイズは,図11に示すように,PC用マウスの外形とほぼ同じぐらいになっています。
そして,試料台のアタッチメントを交換することで図12に示すように観察面(導波モードチップ側)を上下に変更できるため,倒立および正立顕微鏡の両方に対応することができます。
通常のTIRF観察は,倒立で行われるため,設計は倒立顕微鏡に最適化しており,サイズ的にローエンドからハイエンドまで市販の生物用倒立顕微鏡のほとんどの機種で使用可能となっています。(お使いの倒立顕微鏡のステージの上にマウスをのせてみて,特に干渉する部分があるかないかで,対応性のチェックができます。)
正立顕微鏡の場合,図13に示すようなデジタルマイクロスコープが適しています。(生物用の機種は,特にハイエンド品でステージと対物レンズの空間が狭いものが多く,コンパクトなWG-TIRFでも使えない場合があるのでご注意ください。)

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プレパラートの作成

TIRF観察するための一般的なプレパラート作成の手順(動物細胞の場合)は以下のようになります。

  1. 試料台を滅菌(アルコール洗浄など)
  2. 試料台の上(導波モードチップ上)に細胞培養用のプラスチックセルを接着する。
  3. セル内に任意の細胞を播種し,接着させる。
  4. 目的に合わせた方法で,蛍光染色を行う。
  5. 緩衝液などの水溶液に置換する。
  6. プレパラート作成用の道具を用意する。(図14)
  7. プラスチックセルを接着した細胞が剥がれないように慎重に剥離する。(図15)
  8. 18 X 24mmの角カバーガラス(NO.1-S推奨)を被せ(図16),カバーガラスを適当な重りで固定する。(図17)
  9. 余分な水分を拭き取り,水分が蒸発しないようにカバーガラスのまわりをトップコートなどで封止する。(図18)
  10. 蛍光色素が退色しないように遮光保存する。

上記のプロトコールは,一般的なものです,観察対象に合わせて,適切に改良してください。また,動画も合わせて御覧ください。

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蛍光色素の対応表

WG-TIRFは,LED光源,励起フィルター,試料台の組合せで様々な蛍光色素に対応します。
下記に対応表を示します。
(※ 560nm励起は,入射角補正で調整する必要があります。)
試料台は,台形プリズムの左右の角度を変えて2重染色に対応しており,角度ペアと導波モードチップの組合せで,2重染色ペアが決まります。基本セットには,最も使用頻度が高いと思われる色素ペア(Green & Red)に対応した試料台が入っていて,その他のペアはオプションです。詳細は価格表を御覧ください。

蛍光色素対応表
蛍光色素対応表拡大画像蛍光色素対応表

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使用方法-1 (動画)

WG-TIRFの使用方法を動画で説明します。

WG-TIRFの紹介と使い方(基本編)
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使用方法-2 (レポートダウンロード)

基本的な使用方法は,使用方法-1の動画を御覧ください。
当社では,今後様々なサンプルを使ったTIRF・全反射暗視野観察を行い,PDFレポートを作成していきます。レポートは下記のリンクよりダウンロードできますので,測定の参考にお使いください。

  • オリンパスTIRFを使った測定
  • プレパラートの作成手順(作成予定)
  • WG-TIRFによる全反射暗視野観察の基本(作成予定)
  • WG-TIRFによるTIRF観察の基本(作成予定)

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画像ギャラリー

今後,当社で実施したTIRF・全反射暗視野観察の画像をアップしていきます。
WG-TIRFを使ってどの程度S/Nの高い画像が取れるのか?
落射照明との違いはどのぐらい?
などの参考にしてください。

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価格表(標準価格)

基本セット 標準価格 ¥2,000,000-

セット内容

本体(1台),試料台アタッチメント(倒立用1個,正立用1個),電源ボックス(1台) ※制御ソフトはここからダウンロードしてください。(Windows 64bit用),電源アダプター(AC100V用,1個),LED光源給電ケーブル(2本),USBケーブル(1本,A miniB),試料台(1個:140°&143°,30nm / 362nm),励起フィルター(3枚:SP500,SP550,SP575),LED光源モジュール(3枚:Blue,Green,White)

基本セット

オプション
試料台
光源モジュール
UV390 
UV420 
Blue(470) 
Green(530) 
Red(627) 
励起フィルター
角カバーガラス(100枚:18 X 24mm,NO.1-S)
細胞培養用プラスチックセル(フタ付)(20個)
¥10,000-
トップコート(推奨品,1本)
¥2,000-

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English summary

本体と電源ボックス
Fig.1 Main body and Power supply BOX

WG-TIRF (Fig.1) is an optional unit that allows easy addition of the TIRF(Total Reflection Fluorescence Microscopy) function to Commercially available microscopes.
For an explanation of the TIRF and the difference between WG-TIRF and the major manufacturer's TIRF, plase refer to Technology page. The following is a brief summary of the features of our WG-TIRF for a major manufacturer's TIRF.

Major manufacturer's (Objective lens type)

  • Very expensive(Several hudred thousand dollers)
  • It is suitable for high magnification observation (x60 or more).
  • Low magnification (wide field of view) obseration is impossible.
  • Adjustment is severe, but if successful, very high resolution images can be obtained. -→ High-end use

WG-TIRF (prism type)

  • Low price(Basic SET $20,000-,1/10 or less of major manufacturers' products)
  • It is suitable for low magnification (wide field of view) observation.
  • It is darken in high mabnification.
  • Images with higher contrast than usual can be acquired for routine observation. -→ Daily use

Manufacturer's TIRF is a product that is positioned between laser confocal microscopes and super-resolution microscopes, and has not become so popular as true high-end users are shifting to super-resolution microscopes.
We developed WG-TIRF for whitch the observation technology, known as TIRF, used some exparts can be used widely by user who use microscope as routine observation. Even research instruments must first be inexpensive to disseminate. In addition, it is require to have a good balance between price and performance and to meet the needs of researchers.
This section briefly introduces the configuration, use, functions, and observation images of WG-TIRF devices.

Equipment configuration

It mainly consists of two units: the main body (right in Fig. 1) and the power supply BOX(left in Fig. 1).

How to use

Place it on the stage of the microscope as shown in Fig.2.

顕微鏡への設置イメージ
Fig.2 Installation Image on microscope

Function
  • Dark field (scattered light) observation and fluorescence observation by total reflection illumination are possible.
  • Two total reflection optics allow fluorescence observation of double stained samples.
  • By replacing the attachment of the sample table, it can be used for both inverted and upright microscope.
Example of Observed Image


Dark field image by WG-TIRF


Fluorescent image (Left: epi-illumination, right: WG-TIRF illumination)

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